肺がんは、日本におけるがん死亡原因の上位を占めており、その早期発見と治療は医療界の重要な課題となっています。日本国内だけでなく、世界的にもこの分野の研究が進められていますが、その中でも特に革新的なアプローチを導入し、多くの患者の命を救ってきたのが、肺がん診断・治療の第一人者である加藤治文先生です。先生は、長年にわたる研究と臨床経験をもとに、肺がんの診断と治療の最前線で活躍されています。本記事では、加藤治文先生のこれまでの功績、がん検診の重要性、そして最新の治療法について詳しくお伺いしました。

加藤 治文プロフィール
【経歴】
東京医科大学卒、同大学院修了、スウェーデン・カロリンスカ研究所留学、前東京医科大学外科学第一講座主任教授、東京医科大学副学長、東京医科大学臨床プロテオームセンター長
国際細胞学会会長、国際肺癌学会会長、国際肺癌学会理事長、国際気管支学会会長、日本医療学会理事長、日本臨床細胞学会理事長、日本肺癌学会総会会長、日本肺癌学会理事長、日本外科学会評議員・理事、日本呼吸器外科学会評議員・理事、日本呼吸器内視鏡学会評議員・理事、日本呼吸器学会代議員、日本臨床腫瘍学会評議員、日本癌治療学会評議員・理事、日本レーザー医学会理事長、国際レーザー医学会会長、国際光線力学学会会長、日本臨床プロテオーム研究会会長、日本光線力学学会会長などを歴任
【公官庁】
科学技術庁、通産省工業技術院、厚生省、日本学術会議研連、文部省、文科省、日本医師会、厚労省等の専門員などを歴任
【受賞歴】
1986日本臨床細胞学会学会賞、1997日本気管支学会池田賞
1998国際細胞学会Goldblatt賞(米国)
1999国際胸部疾患学会Distinguished Fellow Award(米国)
2005国際光線力学学会 The “von Tappeiner” Medal(ドイツ)
2005国際肺癌学会IASLC Merit Award(米国)
2007日本医師会優功賞
2017 Song Eum Prize(韓国)
2019国際光線力学学会 Gold Medal Award(米国)
肺がんの早期発見がなぜ重要なのか?
肺がんは非常に進行が早く、症状が出てからでは手遅れになることが多いがんの一つです。特に初期の段階では自覚症状がほとんどなく、気づいたときにはすでに進行しているケースが多いのです。そのため、早期発見が生存率向上の鍵を握ります。近年ではCT検査の技術が飛躍的に向上し、従来の胸部X線検査では見つけにくかった微小ながんも早期に診断できるようになっています。これにより、多くの患者さんが適切な治療を受けられる機会を得られるようになりました。

CT検査と従来の検査の違いとは?
胸部X線検査は、がんがある程度の大きさにならないと検出が難しいのが課題でした。特に初期の小さながんはほとんど見つからず、発見された時点ではすでに進行が進んでいることも多かったのです。しかし、CT検査では数ミリの小さながんも発見できるため、早期発見において圧倒的な優位性を持ちます。
また、最新のCT技術では被ばく量を抑えつつ高解像度の画像を提供できるため、安全性も向上しています。特にリスクの高い喫煙者や家族歴のある方は、定期的なCT検査を受けることで早期発見のチャンスを高めることができます。さらに、AI技術と組み合わせた診断補助システムも導入されつつあり、より正確で迅速な診断が可能になっています。
光線力学的治療法(PDT)とは?
PDT(光線力学的治療法)は、がん細胞に特異的に集積する光感受性物質を投与し、レーザー光を照射することでがん細胞を選択的に破壊する治療法です。通常の外科手術とは異なり、正常な組織へのダメージを最小限に抑えながら、がん細胞のみを効果的に攻撃できるという大きな特徴があります。
この治療法の最大の利点は、手術が困難な患者さんにも適用できることです。特に高齢者や、心肺機能の問題で手術を受けるのが難しい患者さんにとって、PDTは有力な治療選択肢となります。
PDTはどのような患者に適用されるのか?
PDTは主に早期の肺がん患者さんに適用されますが、それ以外にも以下のような患者さんに有効です。
- 手術が困難な高齢の患者さん
- 既存の治療で十分な効果が得られなかった患者さん
- 食道がんや胃がんなど、他のがん種への応用
この治療法は日々進化しており、より多くのがん種への適用が期待されています。今後さらに研究を進め、より多くの患者さんにこの治療を提供できるようにしたいと考えています。

がん検診の受診率向上に向けた取り組み
がん検診の受診率を向上させることは、医療界全体の重要な課題の一つです。特に肺がんは早期発見が生存率に直結するため、定期的なCT検査の受診を強く推奨しています。私は、日本医療学会を通じて啓発活動を行い、自治体や企業と連携して職場検診や地域検診の機会を増やす取り組みを進めています。
特に喫煙者や家族に肺がん患者がいる方は、肺がんのリスクが高いため、早期に検査を受けることが大切です。最近では、オンラインを活用した啓発活動や、無料検診キャンペーンなども実施し、より多くの方に検診の重要性を伝える努力を続けています。
国際的な評価と今後の展望
私の研究は国際的にも評価され、1998年の国際細胞学会Goldblatt賞や2005年の国際光線力学学会The “von Tappeiner” Medalを受賞しました。これらの賞は、私一人の成果ではなく、共に研究を進めてきた多くの医療従事者との努力の結晶です。今後も肺がんの診断技術向上に貢献し続けたいと考えています。
また、AIを活用した診断支援システムの開発や、PDTのさらなる応用拡大にも取り組んでいきたいですね。さらに、がん検診の重要性を広め、肺がんで苦しむ方を一人でも減らすことが私の目標です。
肺がんの早期発見と治療の重要性を改めて認識し、定期的ながん検診を受けることが大切です。本記事を通じて、より多くの方にその重要性が伝われば幸いです。